すぎのこの保育

 (1) すぎのこ保育園の歩み

 すぎのこ保育園は“みんなの力ですばらしい保育園を”という、 飯能保育をすすめる会のよびかけで、たくさんの人びとの知恵と力をあつめて1967年(昭和42年)4月に開園しました。

それから11年間、無認可保育園としての厳しい条件のなかで、すぎのこ保育園は、ゼロ歳児保育、長時間保育、アレルギー食作り、 障害児保育などを率先しておこない、働く父母になくてはならないものとして、大きな役割を果たしてきました。 すぎのこ保育園を認可施設にということは、開園以来の念願でしたが1978年(昭和53年)6月に、 長い間の運動が実って認可保育園になることができました。その後1984年(昭和59年)3月には、 現在の園舎が完成し今日にいたっています。  

(2) みんなで力をあわせて

 すぎのこ保育園は、社会法人弥生会が責任をもって運営していますが、保育園の職員、保護者もお互いの立場を尊重しながら、 みんなで力をあわせて、民主的なひらかれた保育園づくりをすすめるというのが運営の基本です。  

(3) すぎのこの保育

 ゼロ歳児(産休明け)から就学前までの一貫した保育をおこない、 一人ひとりの子どもを大切にし、豊かな生活経験を通じて、すべての子どもが心身の健全な発達を遂げることを目標にしています。

よくたべる よくあそぶ よくねむる

 という子どもにとって欠かすことのできない生活のリズムを土台にして、すぎのこ保育園の次のような子ども像をめざしています。  

(4) すぎのこ保育園の子ども像

じょうぶなこども よくあそぶこども よくかんがえるこども やさしいこども  

すぎのこ保育の特色

“みんなの力ですばらしい保育園を” という願いのもとに1967年に開園したすぎのこ保育園は、 その名前もみんなの投票で決められました。 《子どもの気持ちを育てる》  『すぎのこの保育とは』 とたずねられてもはっきりと考えをまとめることがなかなかできない。これはまだ私たちの保育に対する考え方がきちんと確立されておらず、 いろいろなことをやり、試行錯誤をくりかえしていることの反映だといえます。しかしそのなかでも大きな目標としては、意欲的な子どもに、子どもが生活の主人公になれる保育園に、という柱はもっているわけで、別ないい方をすればこの目標に向かっていろいろなことを試みる自由がすぎのこにはあるということができるのかもしれません。 すぎのこでは職員会議でも意見の別れる問題については性急に結論を下さないようにしています。 よく私たちは自分の考えに固執します。相手の意見をなかなか認めることができない「不自由」な存在でもあるわけです。 それだけに時間をかけてその問題についていろんな角度から考え、 学習を重ねるということが私たちの仕事への姿勢としてとても大切なことだと思うのです。 大人と子どもの関係についても同じようなことがいえます。 大人は子どもに多くのことを期待する。しかし子どもはあやつり人形ではないから大人のいうことをきかない自由ももっています。 ここでは大人がそのメンツにこだわって権力者としてふるまってしまうのか、それとも同じ一人の人間として、 子どもの要求を尊重して受容してゆくのとでは子どもと大人の信頼関係を築くうえで大きな違いがでてきます。 私たち大人はややもすれば自分の考えは正しいものとして子どもにそれを押しつけがちになります。 それがよい子ということになればよけいその傾向は強まります。たとえば〇〇保育というとき、 その良さだけが強調されて、子どもの気持ちはどこにいってしまったのかということだけがたいへん気になります。私たちはそうすることよりも、 子どもたちが自分の気持ちで、裸や裸足になれ、 どろんこあそびができるような力を保育の中で育てたいと思うのです。

以上   中里幸矢(元園長)「すぎのこの保育」より抜粋

 すぎのこのあゆみ編集委員会編集『すぎのこのあゆみ』1988